行政書士ともめごとのない遺言⑬
遺言書
遺言者、丙野春夫は、次のとおり遺言する。
1,私のA銀行いわき支店口座番号0123456普通預金のうち
金800万円は乙野夏子(福島県いわき市常磐〇〇2丁目2番
地 コーポいわき1017号室に遺贈する。
2,前条記載の普通預金のうち。金400万円は、私の長女 甲
野秋子に相続させる。
3、第1条に記載の普通預金のうち、上記に記載のない部分は、
私の2女、丙川冬美に相続させる。
4,前条までに記載のない財産はすべて 前記乙野夏子に遺贈す
る。
〇〇年〇月〇日
福島県いわき市常磐2丁目2番地
丙野春夫 印
⇒上記遺言書の内容を実現する責任者が不明である。
1と4は相続人ではない。
上記遺言書の問題点は、自筆証書遺言であるにもかかわらず
家庭裁判の検印を受けていないことです。検印の申立てを行
うのは遺言書の保管者もしくは遺言書を発見した相続人で
す。この遺言書が公正証書であれば検印は必要ではなかっ
た。
次に問題となるのは、金融機関で遺言者の口座にあるお金を
金融機関は自動的に振り分けてはくれない。銀行の窓口で
「相続人全員の同意か遺言執行者の選任が必要です。」と言わ
れるはずだ。
また、相続人でない人が財産をもらう「遺贈」を実現するに
は相続人全員の協力により「遺贈財産」を渡してもらい、受
け取とる必要がある。
一方、相続人は相続分は自分で手続きしてもらうことができ
る。
ただし、遺言執行人を選任すれば、遺言執行人に遺言を実行
してもらうことができる。遺言執行人は家庭裁判所に申し立
てすれば選任できる。
結論になるが、遺言者はどうすればよかったのだろうか?
①公正証書遺言を作成すればよかった。
②遺言書内で遺言執行人を選任すべきだった。
③金融機関によっては遺言執行人の具体的な権限が遺言書内
で記載されていなければ、遺言執行人のみでは手続きがで
きない場合がある。遺言執行人を選任する場合は遺言書
内で遺言執行人の権限を記載しておくべきである。
「預貯金の名義変更、払い戻し、解約、遺言者名義の証券
口座の名義変更、有価証券の換金、解約、貸金庫の開
閉、解約、内容物の受領その他本遺言を執行するための
一切の権限」
④「前項記載の遺言執行人が、この遺言執行完了前に死亡し
職務執行が不能になったときは、遺言者は、本遺言の執
行として甲野 太郎を指定する。」と遺言執行人に対し
て予備的な記載を遺言人はしておく。また、順位をつけ
複数の遺言執行人を選任することもできる。
江尻 一夫行政書士事務所
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