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行政書士と第4次産業革命⑥

行政書士と第4次産業革命⑥
第4次産業革命とは話がそれるが
2017年3月28日に政府が「働き方改革実行計画」という広範な政策文書を策定し、これに基づいて去る2018年6月29日に働き方改革関連法が成立した。
 残念ながら日本では、これまでの日本型雇用システムの存在感が余りにも大きいため、そこからの脱却の問題に神経が集中してしまいがちになり、この世界共通の文脈への目配りがおろそかになりがちな傾向が見られる。
働き方改革実行計画では次の3つの新たな働き方について言及している。
①雇用型テレワークで、雇用契約の下で自宅、サテライトオフィス、あるいは特定した働き場所を決めないモバイル勤務を推進していくことが書かれている。
②2つめは非雇用型テレワークである。個人請負型の一種の自営業であるが、インターネット等を通じて、個人が業務を請け負う形で就労するものである。典型例として、クラウドワークが示されている。
③副業・兼業の推進も打ち出されている。複数の企業と雇用契約を結ぶパターンのほかに、その幾つかを個人請負で就業する形態である。
これらについてはとりあえずは立法による対応ではなく、2017年10月から開いた「柔軟な働き方に関する検討会」の議論を踏まえて、2018年初頭に行政のガイドラインをいくつか発出した。
1・2018年2月に策定された「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」は、労働基準法の適用に関する留意点について細かく記述するとともに、テレワークを適切に導入及び実施するに当たっての注意点等にも触れている。
2・同じ2018年2月には「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」も策定され、注文者と在宅ワーカーの間に仲介機関が介在するクラウド型も含めて、契約条件の変更、成果物が不完全な場合の取扱い(補修、損害賠償)、知的財産権の取扱い、秘密保持義務と個人情報の取扱いなどを記述している。
3・2018年1月には副業・兼業を原則的に解禁するという旨の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定するとともに、モデル就業規則を改定して、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設した。
4・さらにこのうち自営型テレワークを含む雇用類似の働き方に関しては、2017年10月から「雇用類似の働き方に関する検討会」を開催し、2018年3月にとりあえずの報告をまとめたが、今秋以降再度突っ込んで議論を進めていく予定である。
以上の日本政府の対応から、第4次産業革命時代の到来にもかかわらず、日本型雇用の維持のため現行の労働基準法を根本的に変更することなく、「ガイドライン行政」で対応していこうとする日本政府の意図があからさまに見て取れるのである。
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1溝 和久