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行政書士と登記⑰

行政書士と登記⑰
贈与によって所有権が移転されたとき
贈与には
①生前贈与
②死因贈与
があるが、いずれも登記記録には「贈与」と記載される。
贈与には贈与税の高い税率が課せられるので、税制上の特例がある場合に「贈与」を原因として所有権移転登記されること場合が多い。

1・贈与の税制上の特例には次のようなものがある。
①相続時精算課税制度による贈与
贈与時にいったん贈与税を支払い、相続時の相続税と清算する制度である。この制度を利用すると2,500万円の非課税枠与えられる。

②配偶者控除による贈与
 配偶者控除を利用した夫婦間での居住用不動産の贈与。婚姻期
 間が20年以上夫婦であれば、110万の基礎控除のほか2,000
 万の配偶者控除がある。

2・離婚にともなって財産を分けたとき
  不動産を分与したときは、所有権移転登記を行う。
  なお、財産の分与は当事者間の協議で決定するが、協議が成
  立しない場合は、離婚後2年以内であれば家庭裁判所に決め
  てもらうことができる。

3・共有名義の不動産を単独名義の所有にしたとき
 不動産を共有しているものは、いつでも共有物の分割請求がで
 きる。分割方法には以下の2つの方法がある。5年を超えない
 期間は分割しない旨の契約をすることができる。

 ①一つの土地を分割する
  ABが1/2の持分で土地を共有する場合は、まず土地を2つの土
  地に分筆する。一方の土地のBの持分を「共有物分割」を原因
  としてAに移転し、もう一方の土地のAの持分を「共有物分割
  を原因としてBに移転する。

 ②2つの土地を分割する。
  Aが単独所有したい土地についてのBの持ち分を、「共有物分
  割」を原因としてAに所有権移転する。同様に、Bが単独所有
  したい土地ついてのAの持分を「共有物分割」原因としてBに
  所有権の移転をする。

4・本来の所有者の名義に直したとき
 誤って所有権の移転登記をした場合が該当する。この場合は所
 有権更正登記を行う。更正の前後で同一性がなければならな
 い。土地に抵当権が設定されている場合、設定権者の承諾書
 が必要であるが、承諾書が得られない場合は、「真正な登記名
 義の回復」を原因として所有権移転登記を行う。

5・土地の合筆や建物の合体をした場合
  本来なら土地や建物の登記は表題部の登記であるが、「合併
  による所有権登記」が登記される。

6・不動産を交換したとき
  ⇒所有権の移転登記をする。
  譲渡所得税が課税されるが、次のような場合は所得税が課税
  されない。
  ①固定資産であること。
  ②同じ種類の資産であること。
  ③交換する土地は1年以上所有したものであって、交換のた
  めに取得したものでないこと。
  ④交換により取得した不動産を、譲渡した不動産と同様の用
  途に使用すること。
  ⑤交換する不動産の価格の差が20%以内であること。

7・時効によって不動産を取得したとき
  ⇒所有権移転登記(登記原因取得時効)
  専有している財産が他人の所有であることを知らず、しか
  も、知らないことについてやむを得ない事情があると判断さ
  れる場合の取得時効は10年、それ以外の場合は20年。

8・信託によって所有権が移転されたとき
  ⇒所有権移転登記(登記原因信託)
  不動産信託とは、「委託者」が自分の不動産の所有権を「受
  託者」移転して、その不動産を運用して得られる利益を「受
  益者」に与えることをいう。受託者は不動産の所有者になっ
  たわけではなく、信託目録に従って、不動産を管理、運用で
  きるだけである。

9・借金が払えなくて不動産を債権者に引き渡したとき
  ⇒所有権移転登記(登記原因代物弁済)
  代物弁済とは、借金などの支払いが滞った場合、現金で支払
  う代わりに不動産などを引き渡す契約をいう。
  「停止条件付き代物弁済」(債務者が返済しない場合は、不
  動産の所有権が債権者に移転するという契約)「代物弁済予
  約」(債権者が予約完結権を行使するという契約)、いわゆ
  る仮担保登記をすることで債権の保全をする。

10・担保のために不動産を債権者名義にしたとき
  ⇒所有権移転登記(登記原因譲渡担保)
  譲渡担保とは、借金などの担保として土地などの財産を債権
  者に移転することをいう。返済できなかった場合は、債権者
  がその所有権を完全に所有する。
  注意しなければならないのは、登記原因が譲渡担保の所有権
  移転登記場合は真の所有者がわからないということである。

11・差押さえを受けたとき
   ⇒処分制限の登記(担保権の実行としての差押え、競売開
   始決定による差押え、仮差押え、仮処分、滞納処分による
   差押え)ある場合は、処分が禁じられた不動産ので注意を
   要することは言うまでもない。

12・会社が合併したとき
  ⇒被合併会社の不動産は存続会社に所有権移転をする。存続
  会社の不動産については、所有権移転ではなく、商号や本店
  所在地が変更になった場合は変更登記をすればよい。なお、
  新設合併の場合は必ず所有権移転登記をする。 

13・会社の出資に不動産をあてたとき
  ⇒出資した会社に対し書有権の移転登記(登記原因現物出
   資)をする。
   *現物出資⇒金銭に代わって、不動産などを出資するこ
    と。

14・町内会の代表者が変更になった場合
   町内会などの任意団体が所有している不動産などについて
   は、町内会の代表者が変更になる場合は、「委任の終了を
   原因として)旧代表者から新代表者に所有権の移転登
   記をする。

15・所有者や抵当権者の氏名や住所が変更になった場合
   ⇒所有権(抵当権)登記名義人変更登記をする。
  これで、甲区については終了ということになる。次回からは
  乙区である。

2021/6/8