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終活と行政書士(家族信託②)

終活と行政書士⑫(家族信託②)
家族信託はメリットが多いが果たして万能なのだろうか?

結論から言うと、万能ではない。
万能でない理由は
①身上監護権がない。
②委託者の面倒な財産管理を誰もやりたくない。
③家族間の不公平感を生む恐れがある。
 2人子どもがおり、そのうちの1人を受託者とした場合に、他
 の子どもに何も知らせず勝手に進めてしまうと、知らされなか
 った子どもから文句が出てくることもある。
④長期間に渡り受託者が信託契約に拘束される。
⑤祖父母や両親に契約の同意をとりにくい。
 家族信託の主役は祖父母または両親だ。そのため受託者候補
 の子どもの意向だけで進めることはできない。祖父母または両
 親が理解し、進める希望をいただかない限りは進められない。
⑥信託している不動産の損失を別の信託財産で相殺できない。
⑦家族信託をした不動産については信託していない事業との損益
 通算ができない。
⑧扱えない不動産がある。
 畑、田んぼについては、家族信託をすることができない。
 これらの不動産は、農作物を育てるために重要な土地として国
 として特別なルールを作っている。そのため、農地は農業協
 同組合または農地保有合理化法人による信託の引受け以外、原
 則として信託できない。
⑨税務申告の手間がかかる。
 信託財産から発生する収益の額が3万円を超える場合には毎年、
 信託の計算書を作成し提出する必要がある。
⑩.直接的な節税対策にはならない。
 家族信託それ自体には、相続税を節税する効果はない。
⑪遺留分侵害額請求をされる場合がある。
⑫信託した財産にはいずれ相続税がかかる。

デメリットを回避するには
〇家族信託には、デメリットも多いので、家族信託契約と任意後見契約、遺言はセットで準備しておくと、お互いの不十分な箇所をカバーできるため、想定外のことが起きても対応できる範囲を広げることができる。これは利用者側の安心にもつながる。

〇関係者全員が家族信託を理解しておく。
 関係者全員の理解がないとトラブルに発生する。


2020/10/7