行政書士と債権法改正⑦債権譲渡、債権引受け
債権は自由に譲渡できる。(譲渡自由の原則。新法466条1項)。
今回の改正で将来債権の譲渡も有効とされたが、立法措置は見送られた。
また、次のとおり、債権の種類の区別がなされた。
1 譲渡債権が預貯金債権
2 それ以外の 債権(「一般の債権」という)
さらに、それぞれの種別において規律が 区別された。加えて、 新法では「譲渡制限特約」が定められた。
ア 一般の債権に関する規律
〇譲渡制限特約に反する債権譲渡であっても有効 である
(新法466条2項)。
〇悪意・重過失の譲受人 の場合も同様。(旧法466条2項
の削除)
〇物 権的効力は否定された。契約には原則として第三 者
効はないことや債権の流通性確保の要請のためで あ
る。
〇 損害賠償請求は否定する見解があり,その可否 は解釈
による。
〇譲渡制限特約付きの債権が二重譲渡された場合は
債務者の利益保護のため,悪意・重過失の譲受 人の場
合には,債務者は譲受人への履行を拒むこ とができ,
また譲渡人に対する履行を譲受人に対 抗できる(新法
466条3項)
・債務者による供託制度が設けられた(新法466条の2 第
1項)。
・ 譲渡制限特約を付しても,その債権に対する差 押えは
禁止されない(新法466条の4第1項)
・債務者は,差押債権者 に対する履行を拒むことがで
き,かつ,譲渡人に対 する履行を対抗することができ
る(同条2項)
イ 預貯金債権に関する規律
〇預貯金債権に譲渡制限特約が付された場合には, 悪
意・ 重過失の譲受人に対する債権譲渡は無効で あ
る。(預貯金債権における物権的効力の維持。
新法466条の5第1項)
〇差押えを妨ぐことができるものではない(同条第2
項)。いずれも預貯金債権の特殊性を理由とする。
3 対抗要件と抗弁・相殺の優劣
〇対抗要件具備と相殺の優劣は明文化された。債務 者は,対
抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対 する債権を自働
債権,譲渡債権を受働債権とする相 殺をもって譲受人に対
抗できる(新法469条1項)。 自働債権と受働債権の弁済期
の先後は問わない(無制 限説の採用)。
4 異議をとどめない承諾による抗弁の切断の廃止
〇抗弁の切断という重大な効果を付すほどの帰責性が債務者
に認められるか疑問であったため,異議をとど めない承諾
による抗弁の切断は廃止された
5 併存的債務引受
〇引受人は債務者と共に同一の内容の連帯債務を負 い
(新法470条1項),引受時に債務者が有していた 抗
弁事由での対抗(新法471条1項),解除・取消し に
よる履行拒絶(同条2項)ができる。
6 免責的債務引受
〇債務が同一性を維持したまま引受人に移転し,元 の債務
者が債権関係から離脱する(新法472条)。
・債 権者・引受人間の合意の場合,債務者への通知を要
する(同条2項)。
・新法は,債務免除が債権者の意思 表示によること等を
理由として,債 務者の意思に反しても有効とした。
・一方,債務者・ 引受人間の合意の場合には債権者の承
諾を要する(同 条3項)
要約すると、債権譲渡及び引受けついては整理されたことは
否定できないが、改正が中途半端な感じがする。
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