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小説 田舎行政書士 BCP策定12話

小説 田舎行政書士 BCP策定第12話
https://www.youtube.com/watch?v=thQWqRDZj7E
江尻が佐藤玲子を知らないの当然のことなのである。江尻は、実際に佐藤玲子に会ったことがないからである。
江尻は、県の人事ファイルでしか佐藤玲子を知らない。人事ファイルによれば、佐藤玲子は東京理科大(中退)、茨城大学農学部農芸化学科、福島大学社会学部を卒業している。
最初私大の理科系の大学に入ったが、あまりの程度の低さに驚いて、国立大学の理科系に入り直したらしい。福島大学社会学部は夜間部なので県に勤務しながら卒業したのだろう。
江尻は、人事ファイルを見て、佐藤玲子の向学心に驚かさせられた。
学歴的には、佐藤玲子は江尻の出身大学の後輩に当たる。それに、いわき市出身である。高学歴にもかかわらず、佐藤玲子は消費生活センター勤務でくすぶっている。
知事の「女性幹部登用の促進」の号令で優秀な女性職員を探していた江尻技監の目に留まったのである。彼女の高学歴、大学の後輩、いわき市出身ということで、江尻技監が彼女を女性幹部職員のエリートコースのエスカレータに乗せたのである。
どうして、自分を引き上げたのは江尻技監だということを、彼女が知ったのかは知らないが、佐藤玲子が江尻に対して恩義を感じていることは確かだった。
実際の佐藤玲子は人事ファイルの写真と異なって、凄い美人だった。それに、カリスマ性を感じる。江尻技監の人事は大当たりだったのである。
「技監に相談があるんです。」佐藤玲子は頭を下げた。
「え、相談」江尻は驚いたように佐藤玲子の美しい顔を見た。

2020/2/6