法律コンビニ!街の法律家として皆様のお役に立ちたい。

小説田舎行政書士 BCP策定第2話

小説 田舎行政書士 BCP策定第2話
いわき市は人口30万以上の中核都市なので、自前で保健所を設置している。
同様に、福島県内の中核都市である福島市、郡山市も自前で保健所を設置している。
いわき市は人口規模で言えば、政令市仙台市に次いで、東北第2位の大都市なのである。
江尻は、福島県からの1年間出向でいわき市保健所の立ち上げに関わったことがある。
身分は、20歳代後半の年齢にもかかわらず、所長に次ぐ次長待遇だった。大学で農芸化科を専攻したので技術担当次長ということだった。
いわき市出向に江尻はあまり気が進まなかったが、いわき市出身なので断ることができなかった。これで、江尻は県の部長待遇になる道を完全に断たれたことになる。
奇妙なことであるが、役人の出世は役所に入った時点で完全に決まっている。そうしなければ、官僚機構を維持できないからだ。
福島県を退職するときに
「江尻君には悪いことをした。」と知事に謝罪された。知事は、前任の知事から江尻のことを引き継いでいたのだ。
出向しても、一人で何もできない。出向に当たっては、県からいわき市保健所 生活課長と食品衛生係長として、気心が知れた若手職員を任命してもらった。
年明けが差し迫ったある日、江尻は、かつての古巣、いわき市保健所にいた。
新型コロナウィルスことが気になっていたので、保健所から直接情報を得ようと思ったのだ。マスコミ情報なんてあてにならないからだ。
「技監、お久しぶりです。」事務室に入ると、背後から江尻を呼ぶ声がした。振り向くと、江尻が出向のとき連れて行った当時の食品衛生係長山形の懐かしい顔があった。

2020/1/26