小説 田舎業書士 離婚業務第14話
江尻様
お世話になっております。小川です。
ご連絡が遅くなっており申し訳ございません。
昨日夫と話ができました。
協議書の内容について下記のように変更等よろしくお願いいたします。
・慰謝料と扶養的財産分与の支払期間についてですが
1ヶ月先送りとなる
(慰謝料)令和元年11月から令和6年10月まで
→令和元年12月から令和6年11月まで
(扶養的財産分与)令和元年11月から令和4年10月まで
→令和元年12月から令和4年11月まで
に変更をお願いいたします。
・第6条2項 居住家屋に係る夫が支払う費用ですが、
「固定資産税」「火災保険料」は夫が支払うとのことで承諾してもらえたのですが
「水道光熱費」については私が支払うことに決まりましたので
「水道光熱費」のみ文章から削除していただけますようお願いいたします。
・第6条3項 生前贈与の時期ですが、
「令和14年11月より1年以内」としたいのですが
そのような記述にしていただくことは可能でしょうか。
・協議書の最後の夫の住所について
夫と私が同じ住所(私が居住する住所)になっているのですが
意図してそうされているのでしょうか。
江尻先生に作成していただいた協議書案では
夫の住所は現在住んでいるアパートのほうにしていただいていたと思うのですが...
・念のためですが、私の職業の訂正も併せて確認をお願いいたします。
以上です。
よろしくお願いいたします。
依頼人からメールあった。メールの内容は先に送付した公証人が作成した公正証書の訂正依頼であった。
驚いたことに、小川洋子は、住宅の長男への生前贈与を令和14年11月より1年以内に行うことを希望していた。
令和14年と言えば、依頼人が60歳になったときである。おそらく、老後の生活の安定を考えてのことだろう。
勿論、慰謝料と扶養的財産分与の時期を先延ばしにしてくれとの要望があったことは言うまでもない。
江尻は公証人に依頼人の要望を直接伝えるために、依頼者のメールを公証人に転送した。そのほうが、間違いなくてよいと思ったのである。
「公正証書案を訂正してくれ。」という依頼人のメールを読んだ公証人の渋い顔が、一瞬、江尻の脳裏に浮かんだ。
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