法律コンビニ!街の法律家として皆様のお役に立ちたい。

小説 田舎行政書士 第13話

小説 田舎行政書士 離婚業務第13話
驚いたことに、公正証書は、江尻が公証人と協議したその日の午後、FAXで江尻もとに送られてきた。
元検察官だけあって、さすがに、公証人は仕事が早かった。
江尻が気になっていた部分は次のように訂正されていた。
1 甲は、乙に対し、本件離婚に伴い、甲名義の下記自宅建物(「本件不動産」という。)を無償で貸し渡し、乙が希望するまでの間、居住することを承諾する。
2 甲は、乙に対し、本件不動産の固定資産税、火災保険
 料、水道光熱費その他本件不動産に係る一切の費用を払うこ
 とを承諾する。
3 甲は、乙に対し、将来的には、本件不動産を丙に贈与する
 ことを約する。その時期については、甲及び乙が、今後協議
 するものとする。
やっぱり、公証人も江尻と同様、長男への贈与時期に含みを残している。公証人は手厳しいことを江尻に言っても、江尻の気持ちを察してくれたのだ。
公証は短気ではあるが、根は優しい人なのかもしれなかった。
佐川様
お世話様です。
公証人より、現時点での公正証書案が送られきましたので、送付いたします。ご確認をお願いします。
令和元年11月5日
行政書士 江尻 一夫
江尻は、早速、依頼者にメールで公正証書案を送信した。

2019/12/19