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小説 田舎行政書士 第8話

小説 田舎行政書士 第8話 離婚業務第8話
江尻様
お世話になっております。小川です。
追ってのご連絡失礼いたします。
離婚協議書の内容について
一部変更していただきたい箇所がありご連絡いたしました。
預貯金(約120万)の分与についてですが、
本日夫と協議し、家の修繕費に充てたいということで一致し、
修繕には預貯金の殆ど全額が必要になるため
財産分与の対象から除外していただきたく、
協議書の修正をお願いできますでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが
何卒よろしくお願い申し上げます。
小川
メールを開けると、依頼者からのメールがあった。離婚協議書の内容の一部の変更の要請だった。夫の貯金は財産分与から外してほしいとの内容だった。
財産分与を受ける側からの要望なのでなんら問題はない。
おそらく、夫の貯金150万円は、行政書士に対する報酬等その他の離婚手続きに要する費用として、夫が用意したものに違いない。
行政書士報酬については、既に、依頼者に説明し、了解を得ている。夫の貯金から7万円程度の報酬は捻出できるはずだ。
「おそらく、弁護士なら何十万円の報酬を要求するだろう。行政書士も弁護士より離婚業務に精通し、弁護士の高額な料金に苦しむ市民を救わなくてはならない。」そんな正義感にも似た不思議な感情が江尻の心の中に沸きがった。
「どうして、俺は現状破壊を望むだろうか?ひょっとしたら、俺は破壊するすることにエクスタシーを感じているのかもしれない。」江尻は、ガラス戸越しに見える風情のある庭をみながら呟いた。

2019/12/14