小説 田舎行政書士 離婚業務第3話
ヒアリングシートの項目は、次第に埋まっていった。
「素敵なお家ですね。庭が素敵です。」美人は、雑談を始めた。
「亡くなった親爺の道楽でね。実は困っているんですよね。雑草除去が大変なんです。できれば、庭のスペースを駐車場にしたいんです。」江尻はパソコンのキィボードを打つ手を止めた。
「住宅ローンはありますか?」江尻は美人の雑談の腰を折った。
「住宅ローンはありません。」美人はきっぱりと言った。
「住宅は財産分与の対象になりますが、どうなさいますか?」江尻は美人に確認するように言った。
「できれば、今の住宅に住み続けたいんです。」美人は不安げな表情を見せた。
「じゃ、離婚協議書の項目に住居というのを設けることにします。希望どおりになるかどうかは、旦那さんとの交渉次第ですが。」江尻はそう言うと、ヒアリングシートに「住宅」という項目を入れた。
「年金分割はどうしますか?」江尻は提案するように言った。
「私、夫と一緒に年金事務所に行って、証明書を貰ってきました。」美人は証明書をバックから取り出して江尻に見せた。意外にも、美人は「年金分割」のことを知っていた。
「じゃ、離婚協議が成立後、あなたが、一人で年金事務所に行って年金分割の手続ができるよう離婚協議書に入れるようにします。」江尻はヒアリングシートの備考欄に年金分割と入力した。
「あのう。住宅なんですが、離婚後に、夫が長男に生前贈与
することはできないでしょうか?」突然、美人は思い出したように言った。
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