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小説 田舎行政書士 離婚業務第2話

小説 田舎行政書士 離婚業務第2話
「お子さんは?」江尻はヒアリングを続けた。
「長男と長女がいますが、2人とも成人です。」美人は、育ちの良さを感じさせる優雅な仕草でバリスターコーヒーを飲んだ。
「じゃ、養育費は発生しませんね。」江尻は、確認するように言った。
「そうですね。」美人は頷いた。
「慰謝料ですが、一般的に300万円程度ですが、分割払いもできます。」江尻は肝心な部分に切り込んだ。
「分割払いでお願いします。月5万程度で。」美人はこともなげに言った。
「それから、生活が安定するまでの扶養的財産分与というのもあるんですが、どうしますか?これも分割払いできますよ。」江尻は付け加えた。
「え!そんな財産分与もあるんですか?知りませんでした。」美人は驚いたように言った。
「扶養的財産分与は慰謝料ほどは貰えませんが、180万円くらいが適当だと思われます。それに、分割払いの場合、慰謝料より期間が短いですね。」江尻は美人に提案した。
「扶養的財産分与もお願いします。」美人は事務的な口調で言った。
離婚ヒアリングシートの項目は、次第に埋まって行った。
「旦那さんの職業は?別居しているんですか?」江尻は重要なことを、まだ、聞いていないことを思い出して美人に言った。
「別居しているので。最近の夫の状況はわかりませんが、どうやら、会社の役員になったようです。」美人は興味なさそうな顔して言った。
「旦那さんの貯蓄はどのくらいあるんですか?」江尻は言いにくそうに言った。
「150万円くらいはあるんじゃないかしら?この前、家の修理するために夫に確認したところ通帳を見せてくれました。」美人は思い出したように言った。
「その150万円も、おそらく、財産分与の対象になりますね。」江尻は、金額をヒアリングシートに書き込んだ。

2019/12/8