小説 田舎行政書士 第3話
早速、博文のPCを借りて、「相続財産管理人選任届」を作成した。
「こんなにも、簡単なんて。」博文は江尻が作成した書類を手渡すと、驚いたような顔した。
「どころで、光明さん、どうした?行政書士の。」江尻は話題を変えた。
「光明か。実は、あの野郎、生活保護を受けようとしているらしい。」博文は席を立って、机の引き出しから、一枚の書類を取り出して江尻に手渡した。博文の行政書士をしている兄、光明に対しての秋田県のある市役所からの「生活保護扶養照会」だった・
「え!信じられない。」江尻は咄嗟に驚きの声を上げた。
「光明も弁護士事務所を借りて行政書士事務所を開業していたころは、景気が良かったんだが・・・」博文は顔を曇らせた。
「東京都行政書士会の副会長していたんだろう?どうして、こんなことになったんだ。」
「あいつ、名誉職なんかばかりにこだわって、仕事を全くしなかったからな。当然だよ。」博文は、少し、不満そうな顔をした。
「結構、仕事依頼があったはずだよ。」江尻は言葉を継いだ。
「仕事は、一杯あったんだが、みんな仲間に仕事を振ってね。」博文は残念そうな表情を見せた。
「行政書士をやっていると、生活保護を受けることに「恥」がなくなるのかもしれない。生活保護は「自立」するために当然と思うようになる。一種の職業病だな。」江尻は博文に持論を言った。
「それに。光明は、港区の支部長していたときに支部の金使い込んでね。その後始末に、俺の貯金1千万円がぱぁーになってしまった。」博文は悔しそうに言った。
「今、秋田県で行政書士やっているのかな?」江尻は博文が出してくれたペットボトルのお茶を飲んだ。
「わからない。全く消息がないんだ。」博文はぶっきらぼうに言った。もう、兄のことは話したくもない様子である。
「あの世界的に有名になった小説「ハリーポッター」の原作者も生活保護受けていたことを知っているか?衆議院議員の片山さつきが生活保護を受けるなんて恥と言ったがね。俺は、むしろ積極的に生活保護を受けて、一刻も早く自立したほうがいいと思うがね。ただ、日本の場合は生活保護と自立のための職業紹介支援がセットになっていないことが問題なんだよ。」
江尻は持論を展開した。
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