小説 田舎行政書士 第1話
クライアントに同行し、役所で申請書を提出し、家に戻ると
「さっき、博文さんより電話があって、相談したいことがあるんだって。」妻に玄関で告げられた。
博文は、近所に住む幼馴染。早速、家の電話を取って、博文に電話した。
「あ 一夫さん。是非、相談したいことがあるんだ。」博文の慌てたような声が電話から聞こえた。
「すぐ、行く。」江尻は着替える間もなく博文宅に向かった。
博文は江尻より一つ歳が下だが、独身で一人で住んでいる。
兄は東京で行政書士をしている。東京都行政書士会の副会長していたこともあるという。
家に上がると、博文は真剣な表情で本を読んでいた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」江尻は心配気に言った。
「実は、長野の遠縁が死んで、長野に行ってきたんだが・・」博文は話を切り出した。
「え!長野に。」江尻は驚いたように言った。
「実は、長野の遠縁の親戚なんだが、親爺の従妹の子供なんだが。死んでね。身寄り誰もいないんだが、長野の市役所から俺のところに連絡が来てね。行ってきたんだよ。葬式もやって遺骨も預かってきたんだ。」博文は詳しく話始めた。
「相続財産あるの?」江尻は事務的な口調で言った。
「それなんだがね。普通預金で3000万円、生命保険で2000万円あるんだよ。」博文は電気こたつのテーブルの上にある普通預金通帳と生命保険証書を江尻に見せた。
「じゃ、相続財産は全て国のものになってしまうのか。」江尻は咄嗟に言った。
「そうじゃない。特別縁故人があるだろう?俺、特別縁故人に
該当するじゃないか?」博文は読みかけの本を江尻に差し出した。
「実は、俺、故人に何回も会っているんだよ。死後のことまで頼まれているんだ。」博文は個人との経緯を話始めた。
「そうすると、特別縁故人に該当するな。判例にも
特別縁故人は相続財産を相続できるとある。」江尻は、判例を思い浮かべながら言った。
江尻 一夫行政書士事務所
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