行政書士、警察に敗北
電話が鳴った。
電話のを取って受話器を耳にあてると
「〇〇です。実は、警察から実況見分をするから立ち合いをお願いしたいとの連絡ありました。
私、二度と事故現場に行きたくないのでお断りしました。
警察はそれでもいいと言ったんですけども・・」クライアントの不安げな声が聞こえた。
「そうすると。相手の主張が認められてしまう場合があります。」江尻は正論を言った。
「私、どうしても行きたくないんです。」クライアントのすすり泣きが受話器から聞こえる。
「じゃ、私と一緒にこれから警察にいきましょう。」江尻はクライアントに提案した。このような状態になれば、もう、事案は終局にささし掛かったのである。おそらく、警察は検察に送付する書類は作成済なのだ。実況見分は単なる儀式にすぎない。
「交通第2課の○○さんとアポをとってあるのですが。」江尻が受付けの女子に告げると
「ここ真っすぐ行った奥の部屋です。」受付けの女の子は奥の部屋を指さして案内してくれた。
交通2課のドアの前でしばらく待っていると、背の高い好青年が現れた。
「こちらに、どうぞ。」好青年は、二人を取り調べ室に案内してくれた。はじめて入った取り調べ室は、綺麗に清掃がなされていた。
「これが、事故の写真です。」好青年は写真をデスクの上に置いた。
「あ やっぱり、相手の車は右側からきたんですね。」江尻は写真を見て咄嗟にいった。江尻の相手の車は左側から来たという江尻の推論はもろくも崩れ去った。行政書士江尻の完敗である。
「完璧な写真ですね。これでは、否定しようがありません。」江尻は好青年の顔をじっと見た。
「もう決まっているんですね。」江尻は確認するように言った。
「この写真を検察に送付する書類に添付するつもりです。」好青年はきっぱりと言った。
「わかりました。」江尻は頭を下げた。
「紛争処理センターで争うこともできますが・・・」好青年は
案内パンフレットを江尻に手渡した。
「これでは、弁護士に笑われてしまいます。」江尻はデスクの上に置かれた写真を見ながら言った。
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