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小説 ある行政書士の1日

小説 ある行政書士の1日第1話

自分の仕事用サイトの更新をしていると電話が鳴った。
「あの、もし、もし、あのう、江尻ですが・・・」妻の要領を得ない電話応対の声が聞こえる。
客からの電話だった。妻は元銀行員で窓口担当をしていたので、電話応対には慣れているはずなのだが。もうすっかり、スキルを失ってしまったようだ。
 江尻は、最近、急激にアクセス数が増えてきた自慢のサイトを更新する手を止めて、席を立った。
「お客さんからかな?」妻は不安げな表情をして、江尻に電話を渡した。
「江尻 一夫行政書士事務所ですが。」江尻は受話器を受け取るとビジネス口調で言った。
「あ あの加沢医院の前にある事務所ですか?」客は早速話し始めた。
「そうですが。」
「うちの息子の友達のお父さんですか?」
「友達のお父さん?」
「実は、お宅の事務所のサイト見て、息子が友達のお父さんじゃないかって。」客は親し気に話かけてきた。
「どちら様ですか?」江尻は、怪訝そうに言った。
「渡辺です。お宅の息子さん、うちの息子の友達なんです。」
「はぁ~ そうですか。ところで、どんなご用件ですか?」江尻は、長くなりそうな客の話の腰を折った。
「実は、うちの息子離婚調停中なんですが、息子の嫁が隣の家の男と不倫して・・暴力団なんです隣の男。」客は少し、興奮げに言った。         つづく

2018/11/12