行政書士と刑法の基礎45(窃盗罪)
窃盗罪は刑法各論の代名詞のようなものである。
窃盗罪の保護法益には
①占有(占有説)
「正当な権原でなくても」保護
②所有権だけではなくて賃借権や使用貸借権といった正当な権原」に基づくもの。(本件説)
本権説と占有権説の違いは正当な権原にない占有も保護するのかということである。
要件は
①他人の占有
占有しているかどうかの判断は重要である。占有していなければ一般的に占有離脱物横領罪(刑法254条)が成立し、罪名が変わる。
占有していると判断する場合は、どのようなことかであるが、刑法上の判断基準としては
ア・物の大きさ
物が小さいと占有はすぐ失われがち
イ・時間的場所的近接性
物を置き忘れた場合に、その物と人がどれくらいの距離離れ
たか、どれくらいの時間離れたか
ウ・置かれた場所の 状況
物が置かれた場所が人の多い場所であった場合は占有は失わ
れやすい
エ・見通し
被害者が物の占有の認識を欠いてた場合
②財物
禁制品(鉄砲や覚せい剤など)も財物に含まれる。キャッシュカード、クレジットカード通帳も財物である。
③故意
④不法領得の意思
故意の他に要件として必要である。
ア・権利者排除意思
不可罰の使用窃盗との区別のため要件として必要。
使用窃盗とは自転車を短時間で元の位置に戻すような場合
である。
イ・利用処分意思
毀棄罪(器物損壊罪などただ壊したことに対する罪)と区
別するために必要。経済利用目的で盗むという要件
窃盗罪で一番問題なのは、窃盗された人が窃盗された人から奪い返すような場合である。(自救行為)
刑法243条によると、自分の物も他人が占有しているときには他人の物とみなすということであるので、自救行為でも他者が占有していれば他人の財物となるので窃盗罪が成立することになるわけである。
判例によれば、自救助行為は違法性阻却事由としている。結局、占有説と本件説で違いが生ずるのは、自救行為の場合だけである。つまり、窃盗罪の法益保護は「占有」で問題ないのではないだろうか?
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